top of page

プロローグ

かつて地球では世界規模の核戦争が勃発。それを引き金に人類は滅亡。
文明は塵と化し空気汚染のため生物の住めない死の大地へと変貌を遂げてしまった。

人間たちのいなくなった世界で、奇跡的に生き残ったごく僅かな生き物たち。
彼らは放射能の影響により驚くべき速度で進化を遂げ、知性と過酷な環境に適応する能力を得た。
それでも高濃度の汚染された大地は危険であることに変わりはなく、
過酷な状況でも生き残った少数の新生物たちは、いつしか互いに集まり、
汚染の影響が比較的少ない地域に分厚い壁を建設、幾層にもなる階層都市を建造した。


新生物が地上の支配者となってから数百年。
彼らの中で人間の存在は、姿形すら分からない神話のようなあやふやな存在となり、
禁忌を犯した忌まわしき歴史として語られる存在でとなっていた。
都市の分厚い壁の外は、高濃度の汚染区域が多数存在し依然として危険であったが、
都市内部は人工的な環境を完備し、外の影響を受けない安定した生活を送れるようになっていた。
しかし、新たな文明は発展と共に格差が生まれ、
権力者たちは汚染された地表から逃げるように高層部へ。
労働者たちは壁の外に出ることも出来ず、下へ下へと住処を広げていった。

 

一方、戦争が勃発したとき、核の炎から逃れられた者たちがいた。
1つの都市の市民だけが政府の誘導で巨大地下シェルターに逃げ込むことができ、人間の滅亡は免れていたのだった。
しかし、空気汚染、枯れた大地。それらは想定を遥かに超え、
生き残った僅かな人間たちで地上に帰ることは不可能だった。
苦渋の決断であったが政府は地上を諦め、地下に新たな社会を築く決定を下した。
以降、地上の一切の資料を押収し、口にすることさえ固く禁じたのだった。

 

人間たちが地上を捨ててから数百年
政府は汚染の可能性が低い地中深くに拠点を置き、その上に幾層にもなる巨大地下シェルターを建造。
今や地上は、まことしやかに語られるおとぎ話の類となり、
その存在を知るものは、政府の中でもごく一部の者たちだけとなってしまった。
ホログラムの空、コントロールされた天候、人工の風。
巨大地下シェルターは、都市として体をなし人々の生活は安定していった。
しかし次第に格差は大きくなり、政府に反発する者、
あるいは政府から逃れるように、管理行き届かないシェルターの外側に住みつく者も居た。

いまだ互いの存在は知らぬまま、鏡写しのように発展を遂げた世界。
いずれこの二つの世界の境界線は曖昧なり混じり合うことになる。


そんな二つの世界で生きた芸術家たち。
彼らはそれぞれの世界で何を感じ、何を見てきたのか。

喜び 悲しみ

安心 不安 

期待 失望

愛しさ 怒り

空虚

様々な感情が渦巻く中、何を残し、何を伝えていくのか

主人公のいない物語はエンドロールへと向かう

それはハッピーエンドか、あるいはバッドエンドか

描かれた物語の欠片が結末への道しるべとなり教えてくれるだろう


"ZWEI WELTKUNST"

 

それはいつひび割れてもおかしくない危うい世界───

bottom of page